交通事故や様々な外傷などに伴う頭部へのダメージが原因となって発症します。
脳挫傷は、強く殴られた場合のような衝撃によって、突然脳が加速されたり、
頭が動いているときに固定したものにぶつかって急に減速されることによって起こります。
脳は衝撃を受けた側と、頭蓋内の反対側の部位にダメージを受けます。
■脳挫傷の症状
脳挫傷は、脳の物理的なダメージは最小でも起こることがあり、ほとんど症状が現れません。
しかし脳の腫れと出血がひどい場合には、激しい頭痛、めまい、吐き気や嘔吐などの
症状を伴います。
一方の瞳孔が他方よりも大きくなることもあります。
脳の損傷を受けた領域に応じて、思考能力、感情の調節、運動、感覚、言語、視力、聴力、
記憶障害などが現れます。
患者はイライラして落ち着かなくなり、興奮状態に陥るケースもあります。
体の片側の筋力が低下し、しびれの症状を感じる事もあります。より重症の外傷の場合は、
脳の内部で腫れが起こり組織の
損傷が広がります。脳ヘルニアを生じて、昏睡状態に陥ることもあります。
■脳挫傷の診断・治療法
脳の物理的損傷を発見するためにMRI検査が行われます。出血が少ない場合は安静にしている
だけですみますが、数日から1週間は経過を観察しなければなりません。出血が多い場合は、
血腫を外科的に取り除く必要があります。
■脳挫傷の予後
予後は一般的に入院時の意識障害の程度に比例し、昏睡(こんすい)状態の重症脳挫傷
(脳内血腫の合併を含む)の死亡率は約45%、社会復帰は約30%と報告されています。
■脳挫傷後遺症
後遺症のひとつに高次脳機能障害です。
高次脳機能障害とは、病気や事故などの様々な原因で脳が損傷されたために、言語 ・
思考・記憶・行為・学習・注意など高次の知的な機能に障害が起きた状態を高次脳機能障害と
いいます。
原因として最も多いのが脳卒中ですが、交通事故による外傷性の脳損傷(頭部外傷)
でも多く見られます。その他、脳炎や低酸素脳症などでも起こります。
注意力や集中力の低下、比較的古い記憶は保たれているのに新しいことは覚えられない、
感情や行動の抑制がきかなくなるなどの精神・心理的症状が出現し、周囲の状 況にあった
適切な行動が選べなくなり、生活に支障を来すようになります。
高次脳機能障害の多くは外見からは分かりにくく、本人も自覚していないことが多く、
家族からも理解されにくい状況にあります。
また社会生活上いろいろの支障が生じていても、身体機能に障害がない場合は、
身体障害福祉制度の対象になっていないので、現行の医療制度や社会福祉制度の谷間に
置かれており、社会的な支援がされにくい状況にあります。