■脳腫瘍とは
脳腫瘍とは、脳組織の中に異常細胞が増殖する病気です。
大きくは原発性の脳腫瘍と、他臓器から転移した転移性の腫瘍に分けられます。
脳腫瘍の発生率は10万人に対して約10人前後といわれてます。
原発性脳腫瘍
原発性には良性と悪性の2種類ありますが、良性でも大きくなると治療する
必要があります。原発性の悪性腫瘍の大多くは神経膠腫であり、そのうち
約75%は星細胞系腫瘍です。残りは乏突起膠細胞系腫瘍、上衣細胞系腫瘍、
胎児性腫瘍などに分けられます。
転移性脳腫瘍
転移性脳腫瘍は脳腫瘍全体の12-3%を占め、その発生先は@肺A乳腺B消化器C頭頸部
D腎臓E膀胱F子宮の順になっています。組織学的には腺がんが最も多く、扁平上皮がん、
未分化がんと続きます。
■脳腫瘍の原因脳腫瘍の原因、誘因には、結節性硬化症を持つ人やその家族、および外傷、放射線、
遺伝子異常などがあげられていますが、断定されていません。
■脳腫瘍の症状
局所症状
脳は神経の中枢ですが、運動や感覚などの色々な機能は脳の各部位で分散して行われています。
よって、腫瘍の発生した部位によって症状が異なります。侵される部位によって、痙攣発作、
手足の運動麻痺、知覚障害、聴力障害、言語障害、視力低下、視野狭窄、記憶力や判断力の障害、
無気力、痴呆様行動などが起きる場合もあります。
頭蓋内亢進症状
頭蓋内で腫瘍が大きくなると、正常な脳を圧迫し頭蓋内圧が上昇します。これにより持続的な頭痛、
吐き気、うっ血乳頭などがみられるようになります。慢性頭痛はその中でも最も注意しなければ
ならないものです。頭痛は脳腫瘍以外の病気でもおこりますが、脳腫瘍の場合には慢性的に持続し、
朝起床時に強く、その後は次第に症状が弱くなっていく傾向があります。初期の脳腫瘍の約20%に
みられますが、進行するにつれ70%以上みられるようになります。頭痛の増悪とともに吐き気、
痙攣、失神などもみられるようになります。これらの症状がみられた時は、すぐに医師の診察を
受ける必要があります。
■脳腫瘍の診断
症状およびその経過、年齢、性別などの情報は診断をつけるうえで非常に有用です。
脳腫瘍であるかどうかは、CTあるいはMRIなどの画像診断が有効です。脳腫瘍が疑われる場合には、
さらに様々な検査を行います。例えば、造影剤を用いたCTあるいはMRI、脳血管造影、PET、MRSなどです。
一方、血液検査なども行います。脳脊髄液の検査を行うこともあります。徹底的な検査の後に、
脳の中のどの部分に、どのくらいの大きさの、どういう性質の腫瘍ができているかを診断し、
治療の計画が立てられます。
脳腫瘍の種類、悪性か良性か、悪性の場合にはその程度を決める必要があります。このためには、
開頭手術を行って腫瘍を採取してその組織を顕微鏡で調べ、脳腫瘍の種類と悪性の場合には
悪性度を診断する病理診断が行われます。どちらを選ぶかの基準の多くは、画像診断と全身状態によります。
一般的に臨床上の神経症状と脳腫瘍の程度は相関しないことがあります。症状が軽い場合でも、
進行が早い悪性腫瘍に侵されていれば、未治療のままでは1カ月以内に命を落とすこともありますので
注意が必要です。意識障害や傾眠傾向が出現すれば、悪性・良性に拘わらず、緊急処置が必要となります。
これを放置すると近い将来、脳ヘルニアを併発して呼吸停止に陥り、自分呼吸ができなくなります。
脳腫瘍は進行性の病気ですから、頭痛、嘔気、嘔吐などの一連の症状が進行している場合には、
早く精密検査を受けることが必要です。
■脳腫瘍の治療
外科手術
脳腫瘍の治療は外科手術による患部摘出が最も有効な方法で、良性腫瘍の多くは外科手術による
場合が多いのですが、例えば手足を動かす神経のあるところに腫瘍ができた場合など、
手術による治療が難しい場合もあります。悪性度の低い腫瘍なら手術で腫瘍を完全に摘出すれば治療は終了し、
後は経過観察となります。腫瘍が取りきれなかった場合は放射線治療が追加されます。悪性度の高い腫瘍は
周囲に浸潤しながら増殖していくため、まず手術でできる限り腫瘍を取り、その後は状況に応じて放射線治療、
抗がん剤治療が行われます。
放射線療法
放射線療法は脳腫瘍に対しては大変重要な治療法で、特に悪性腫瘍の場合には多くの場合放射線療法が
用いられますが、腫瘍が消えたとしても、その後再発する率が高いため、再発を防ぐ為に化学療法も組み
合わされます。放射線療法は、外科手術や化学療法と組み合わせて行われる場合や、単独で行われる場合もあります。
ガンマナイフ
ガンマ線という放射線を局所に集中させる治療法です。
201個の放射線源が組み込まれたヘルメットのような装置をかぶり、腫瘍に向けて放射線が照射されます。
病巣をナイフでスパッと切り取るような治療法なのでガンマナイフと呼ばれています。
外科手術や放射線療法は、腫瘍患部に対する治療として有効です。
化学療法
抗がん剤による化学療法は手術や放射線療法と併用して行われることが一般的です。
■脳腫瘍の生存率
脳腫瘍全体の5年生存率は75%超程度までになっています。。脳腫瘍全国集計調査報告によれば良性腫瘍の
髄膜種では93%、下垂体腺腫は96%、神経鞘腫は97%です。一方、神経膠腫全体では38%、最も悪性度の
高い神経膠芽腫は6%、その次に悪性度の高い悪性星細胞腫は23%、星細胞腫が66%程度となっています。
転移性脳腫瘍の5年生存率は13%にすぎません。
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